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心の回診

第八十四回

四季を通じて札幌はなんていい所だろうと思う瞬間がある。秋が深まって来たと言うのに、本州の各地は連日30度を越す暑さだ。札幌は涼やかな風が吹き、天が高くなり空気が澄んでいる。瞬間、札幌はいいな・・・と思う。
9月の第一週、私はその暑い神戸に行って来た。パウロ病院の様な医療療養病床の関係者2500名が全国から集まって来た。昨年の診療報酬の改定を受けた大会は、病院の生き残りをかけた熱気の様なものが感じられた。
神戸は生れて初めて訪れる街、大正・昭和の頃のハイカラさんが通る洒落た街。何よりも忘れも しない12年前、早朝の中で起きたあの未曾有の大地震だ。私の10年日記を遡って読んでみたら、平成7年1月17日、阪神大震災、死者は3000人から 4000人、5060人と増え続け、目を覆う地獄絵図が連日テレビで報道された。そんな大きな悲しみ、傷みがあった事など封印されたかの様な平和な神戸に 尊敬の気持ちが湧いて来た。
宿泊先のホテルから会場に行く迄の短い時間、いかにも人の好きそうなタクシーの運転手さんが 観光案内もしてくれた。「神戸のシンボル、105メートルのポートタワーも大丈夫だったんよ」「へェーッ!」と私。石造りの旧い銀行や企業の建物が昭和の ままの姿で威風堂々と残っていた。「おっちゃんの木造の家も大丈夫だったんよ。昔の職人はいい仕事をしたんよ」とのこと。
昔の歌にあったっけ・・・窓を開ければ港が見える/メリケン波止場の・・・。
「歌そのままのメリケン波止場なんですか?」と尋ねると
「昔アメリカ人が沢山おってな、アメリカ、アメリカ、アメリカンメリケンになったんよ」
おっちゃんの観光案内は優しくて楽しかった。
「只今!」始まったばかりの札幌の秋が私を待っていてくれた。
(医療法人中山会新札幌パウロ病院会長)